[第28号:2019-3-24]

本号の主な内容

  • FromAkiraMasuda〜「武道人」とは
  • デジタル空手武道教本ページの更新
  • 特別付録/映像レッスン:今回は、少年部から一般まで、組手稽古前に必ず行わなければならない基本の組手型を数種、アップしております。また、上段の突き技に対する応じ技の組手型を追加しました。さらに、研究科で実施した、黒帯のための頭部打撃ありのTS-αスタイル(ヒッティング)の組手映像も追加してあります。
デジタル教本(組手型、他)の更新(以下にリスト)

 以下の組手型は新装版デジタル空手武道教本(5月に更新予定)に新たに分類整理され掲載される予定です。また、本映像は組手型の稽古映像ですから、正式の組手型の映像は、新装版デジタル空手武道教本の中で更新され、掲載されます。デジタル空手武道教本は、今後IBMA極真会館空手道の修練に欠かせないものです。誤解を恐れずに言えば、日々の稽古のみならず、教本と講習による稽古がなければ、IBMA極真会館の空手道は学べません。もうしばらくお待ちください。

組手型映像の追加

上級者の組手型

組手型の名称の読み取り方

 

組手型の名称の読み取り方には規定を設定しています。その規定を理解すれば、名称で大体の組手型の構成が理解できます。組手型は仕掛け手による仕掛け技と応じ手による応じ技(位置どりのための運足ならびに防御技と反撃技)によって構成されています。組手型の名称はその技の構成を増田式の規定法により分類整理しています(この方法は、増田 章の考案、著作物です)。

例: 〇〇〇に対し「〇〇〇受け〇〇〇突き

  1. 〇〇〇に対しの部分は、仕掛け技の名称
  2. 〇〇〇受けの部分は、位置取りのための運足(入り身や退き身など)
  3. 〇〇〇突きの部分は、反撃技の名称」
拓心武道 修練法は

制心ー制位ー制打の三制一致を目指し

道(天地自然の理法)との一体化

神人合一を目的とします。

   

 

特別付録(映像レッスン)

  • 映像レッスン:研究科、頭部打撃研究〜TSーαスタイル試し合い法の映像。
  • より詳細な映像レッスン(映像稽古)を受けたい方は、デジタル教本のページを見てください。デジタル教本には、より詳細な解説を掲載して行きます(現在準備中のページもあります)。なお、IBMA極真会館の全ての道場生はデジタル教本によって、修練の予習、復習を行えるようになります。
  • デジタル教本のスタートは、4月ごろを予定していましたが、サイトページの変更ならびにコンテンツの追加などを完了し、事務局の準備が整い次第、デジタル教本のお知らせを差し上げます。もうししばらくお待ちください。

 

 

特別映像として、TSアルファスタイルの試し合い(ヒッティング/拓心武道の修練法の一つ)を掲載しておきます。IBMA極真会館の黒帯は全員、これまでの空手技術を更新して欲しいと考えています。研究科のメンバーは、古い空手技術の更新に苦労していますが、頑張っています。なんとか他の道場生にも興味を持って欲しいと思っています。しかし、私の理想の空手を伝えることは困難のようにも思っています。これまで40年以上も他人に空手を教えてきましたが、私の空手の理想を理解できそうな極真空手家はわずかでした。それは、私が教科書を変更する勇気がなかったことが大きな原因です。おそらく、優れた感覚の人はいるはずです。また各人にそのような感覚が眠っているはずです。ただし、音楽でもそうですが、人の好みはそれぞれです。興味ないと思われればそれまでです。しかし、普遍的な要素を理解できる空手人が増えなければ、斯界のレベルは上がらないでしょう。また、中国の偉人である孔子も70年ほどの人生において、60歳を越え、なおも自己を変えること。すなわち自己認識の更新に努めたと記録されています(人生において60回もの更新を行ったと言われています)。

 

 

 

増田より 〜今後のIBMA極真会館空手道

現在、各道場の一般稽古では、極真方式に改良を加えた、TS(べータ)方式を採用しています。しかしながら、上級者や黒帯に人に対しては、頭部打撃ありのTSアルファ方式(通称ヒッティング)を、これから指導していきたいと考えています。頭部打撃を加えた、空手の原点回帰の準備がようやく整ってきました。もう直ぐです。さらに将来、組技や逆技も使いこなせるように、フリースタイルの組手法も指導していきます。

なお、ヒッティングに関しては、スポーツ的にも行えます。ただ、IBMA極真会館空手道は、心を高め人生を拓く、拓心武道の修練を独自の修練として取り入れています。ゆえに、単なる競技空手の前に、組手型で技と理合を学び、試し合い(試合)においては、勝ち負けよりも、技の理合、術理の体得を第一に考えます。

今回のコラムには、その辺を少しだけ書いてあります。是非、一読をお勧めします。また、現在、教本を製作中の組手型は、伝統技や極真空手の原点である、大山倍達先生の空手技を学ぶことが含まれています。大山先生の空手技は、大雑把に言われている、頭部打撃あり投げ技あり、などと言う皮相的な空手技ではありません。ボクシング、レスリング、柔道、中国武術、伝統空手、日本柔術など、様々な武術を融合された武術です。それを増田は研究し、型に再現しました。それを護身術としてのみならず、我々極真空手家のアイデンティティに繋げたいと考えています。

以上のことは、現在の道場稽古だけでは学べません。まずは、IBMA極真会館空手道の理念と理論、哲学をデジタル教本で学んでください。

 

お知らせ

  • デジタル空手武道通信では、常時コンテンツを修正、補充(アップロード)していきます。
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  • ※近日中に以下の更新、掲載を予定しています。 IBMA極真会館空手道の基本修練項目を改訂版の掲載を予定しています。 IBMA空手競技規定の改訂版。 増田章の空手レッスン。

編集後記  第28号

【イチロー選手と「無用の用」】  

 

先日、イチロー選手の引退会見をTVで見た。私はイチロー選手のファンである。彼の物腰は、私が幼い頃、映画やテレビのヒーロから得た、ロールモデルと合致する。また、野球人としての彼の生き方からは、実に多くのことを学んだ。

 だが、10年以上も前、知人を介して話をした、スポーツのメディア関係者から聞こえてくるイチローの評価は、よくないものもあった。 おそらく、イチロー選手は日本のスポーツ業界やメディア、ファンをあまり好きではないだろう。少なくとも不勉強なメディア関係者や軽薄なファンは好きでないと思う。そういえば暴言だとのお叱りを承知で言っている。

 もちろん、心を許すメディア関係者やファンも多くいたと思う。しかし、全てではないだろう。また、そんな思いが強くなった時期もあったはずである。しかし、日本人は好奇心が強く、積極的である。そのような面は良いところではあると思う。しかし、一面、軽薄な感が否めない。また、日本人には、独特の不寛容、狭量さがある、と私は感じている。同時に、それは一面的な見方だ、とも思っている。また、そのような面は、生活圏の狭小さや文化的統一感の影響下における、日本人の自己主張と他者を評価する際の傾向ではないかと思っている。私の個人的かつ自虐的な分析傾向によるイメージではあるが。現時点では完全な分析を展開できない。

 かく言う私もそんな日本人の一人であるゆえか、軽薄にも、アイドルに対するかのように、イチローのキャラクターに惹かれる。だが、私が本当に好きなのは、彼の野球の能力のみならず、彼の「ゴーイングマイウエイ」のようなスタイルと哲学にある。その部分に強い憧憬がある。私はそんなキャラクターではないからだろう。ただ、おそらくそう言えば、「違う」と彼は言うかもしれない。

 それは、人一倍気を使い、努力をし、かつ正直で誠実な人間にも見えるからだ。ゆえに、もっともっと上を目指したいと、可能性に挑戦していた若い頃は、性格や行動の特殊性が見えたかもしれない。しかし、それをとやかく言う人間は不寛容なのだと、私は思っていた。

 たまたまではあるが、イチロー選手の引退の日の就寝前、私はある中国古典の「荘子」の本を読んでいた。その本は若い頃からの私のお気に入りなのだが、忘れかけてきたので再読していた。

 「荘子」は「老子」と並び、儒家に対する道家と言われている思想家である。だが、荘子の思想は独特で、道家のみならず、仏教にも影響を与えたと言われている。禅がそうである。日本では老子と荘子の思想を合わせて「老荘思想」と呼ぶようだ。その「老荘思想」をよく表す言葉に「無用の用」と言うものがある

【イチロー選手の感性は素晴らしい】

 一つだけ、イチロー選手のコメントの中に、「無用の用」に通じるものがあった。イチロー選手の感性は素晴らしい。それを実感し体現しているから。 イチロー選手がこれまで築き上げた実績は、「無用の用」を知っているからこそだと思う。

 さらに言えば、私の直感では、「無用の用」を身体で知っているイチロー選手は、最も監督に向いている人間だ。楽天の三木谷氏あたりがスカウトして、楽天の監督などどうだろうか。一方の巨人は松井氏である。私の妄想だが、そうなれば、日本の野球界が大きく湧くだろう。そのイチロー選手のしびれることばを以下に記しておきたい。ただし、増田式に少しだけ言葉を変えたが。

「4000本安打の裏には、8000本の悔しい思いがある。僕はその悔しさに真剣に向き合ってきた」 「その結果が4000本であり、その結果には興味がない。むしろ、その8000本の体験にこそ大事なものがあるし、私の誇りがある」  

老荘が説いた「踏みしめる大地の有用はわずかだが、それ以外の大地の無用がそれを支えている。そんな老子の「無用の用」の教えが、イチローの生き方のなかに体現されていると思った。また、イチローが体験した引退式は、まさしく我が道を貫き通して、幾たびかの辛酸を舐め、かつ、それを乗り越えた人間しか、表現できな異様な内容ばかりだった。 イチロー選手は、とやかく言うものに対し、いつも我が道を貫き生き続けた。 そうして、日本を離れ、ゴーイングマイウエイを貫きながら、一際大きい大木に育った。その大きさを例えるならば、日本野球が存続する限り、多くの野球ファンの心を休める木陰になるだろう。比類なき大木、イチロー選手に大きな感動を与えられた。ありがとう。

【増田 章は無用な人間】

 

 イチローは有用な人間である。一方、増田 章は無用な人間である(偉そうに師範などと呼ばれているが、本当は嫌いな言葉だ、恥ずかしい)。ゆえに人から相手にされない。しかし、そんな無用な私でも、生きる術があると、今、思っている。それが以下の話から汲み取れる。いかに掲載したい。  

数ヶ月前、不器用だが真面目なシングルマザーの妹を励ました、たとえ話は、荘子に出典があった。私は記憶力が低下しているので自信がなかったが、今回、荘子を読み返して、改めて私の記憶に間違いはなかったと思った。今、私はおばけ大木になろうと思っている。そうして、痛い膝をいたわりながら、日々、金にもならない無用な研究を続けている。  

【お化け大木の謎】

 

南伯子綦《なんぱくしき》は商丘地方を旅した時、ひときわ目を引く大木があった。近寄って見ると、馬車千台がその影で休めるほど大きい。

「いったい何の木だろう。きっと良い材木が取れるだろうな」と彼は考えた。

だが、振り仰いでよく見れば、枝は曲がりくねって、棟木《むなぎ》に梁《はり》にもなりそうにない。

根元を見れば、根が絡まり合って、棺桶も作れそうにない。

葉を噛んでみたところ、たちまち口がただれてヒリヒリする。

葉の匂いを嗅いだところ、たちまち酔を発して3日ものあいだ苦しまねばならなかった。

彼は今にして悟った。「なんとこれは何の役にも立たない木なんだ。だからこそこんなに成長できたのだ。

ああ偉いものだ。

神人と言うのもこの木のように、無用を有用に転化した人のことなのか」

徳間書店 中国の思想第12巻 荘子  「人間世〜お化け大木の謎 」より

 

 

 

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